◆いよいよ始動! 10周年プロジェクト

――TVアニメの放映開始から10周年ということで、現在の心境をお聞かせください。

飯塚 感覚的にはあっという間でしたね。数字だけ見ると長いですが、その間も絶えずファンの声に触れる機会があり、どこかで気持ちが続いているタイトルでしたので。

佐藤 別の作品をやっていても『ARIA』のキャストと現場で一緒になったり、いろんな形でファンの声が届いていたりしましたからね。自分の中でも途切れることなく続いている感覚はありました。そのあとに作った『たまゆら』なんて、『ARIA』があったからこそできた作品だったりしますしね。

天野 私もあっという間でした。『ARIA』のあとに『あまんちゅ!』という作品の連載を始めましたが、描くテーマは変わっても漫画と向き合う姿勢はまったく変わっていないんです。気持ちの面に変化がないこともあって、10周年と聞いたときは「もうそんなに経ったの!?」と驚いてしまいました(笑)。

――10周年を記念したプロジェクトの一環として、Blu-ray BOXの発売と完全新作アニメーション『ARIA The AVVENIRE』の制作が発表されました。プロジェクトが立ち上がるまでの経緯を教えてください。

飯塚 DVD-BOXが出てからしばらく経って、そろそろブルーレイ化を考える時期かなと思い始めたとき、タイミング的にちょうどTVアニメの放映開始から10年になることに気づきまして。せっかくの節目ですし、何か大々的なイベントを合わせてやれたらと思い、ブルーレイ用にアップコンバート処理を行った映像で総集編を劇場公開する企画を考えたんですよ。そのことを佐藤監督に相談したところ、総集編ではなく新作の制作を提案されたんです。

佐藤 総集編って手軽なようでいて、意外と手間がかかるんですよ。テーマや切り口をどうするかで構成の仕方にも工夫が必要ですし。だったら、いっそのこと新作にしてしまったほうが、ファンに喜んでもらえるものになるのではないかと思ったんです。

飯塚 その後、天野先生にも新作の制作に賛同していただき、正式に企画を動かすことになったというのが、プロジェクト発足までの大まかな流れですね。

天野 まさか新作のアニメを作っていただけるとは思っていなかったので、プロジェクトのことを聞かされたときはびっくりでした。

佐藤 TVアニメが終わった直後は、もう描くことはないと思ったんですけどね。でも、ちょっと時間が経ってみると、不思議なものでまたネオ・ヴェネツィアに行きたくなってくるんです。こちらのモチベーションは高まっている状態でしたので、あとは機会さえあればというところではありました。ファンも『ARIA』という作品を相当大事にしてくれているので、せっかくブルーレイ化が決まったことですし、何らかの形でその想いに応えたいということですね。当初はもう少し手軽なものを考えていましたが、話がどんどん膨らんで意外と重い内容になってしまいました(笑)。

飯塚 そのぶん、スタッフにかかるプレッシャーは相当だと思いますよ。でも、佐藤監督をはじめとするスタッフ全員が『ARIA The ORIGINATION』並みのクオリティを目指して制作に取り組んでくださっているので、ファンの期待を裏切らないものになることは保証します。なにしろ映画館での上映に堪えうるクオリティですからね。

佐藤 OVAの『ARIA The OVA ~ARIETTA~』を映画館でイベント上映したことがありましたが、やっぱりスクリーンで観ると印象が違ってきますよね。そこは作り手としても楽しみなところです。『ARIETTA』のときは、3Dで作った大鐘楼を通常よりもややあおり気味のアングルにしたんです。それが大きなスクリーンに映ると、本物の大鐘楼を仰ぎ見るような感じがして、ものすごい臨場感がありました。しかも今回は5.1ch仕様ですから、音の広がりまで感じられるのではないかと。

飯塚 すでに1話のコンテを拝見していますが、スクリーン映えを意識した画面作りになっていると感じました。

佐藤 旧作のイベント上映もあるんですか?

飯塚 現在検討中です。できればファンが選ぶベストセレクションのような形で、キャストの皆さんも招いて開けるといいですね。

佐藤 それは楽しみです。どうせなら、2期のあとにやったようなコンサートも開いたらどうですか?

飯塚 いや、そこまではまだなんとも……。その前に、佐藤監督はまず作るほうをがんばっていただければ(笑)。それと、天野先生にはBlu-ray BOXのほうでもいろいろご協力いただいています。

天野 パッケージのイラストを描かせていただくことになりました。元々は1枚でよかったのに、勝手に2枚も描いてしまってすみません(笑)。

飯塚 いえいえ、こちらとしては願ったり叶ったりです。

佐藤 どちらがいいか聞かれたので「両方」と答えたら、本当にそれで決まってしまったという(笑)。

天野 漫画家なので1枚絵で勝負するのにどこか不安があって、コマを割るような感覚で連続性のあるイラストを2枚描いてしまったんです。ですから、佐藤監督がそのことを感じ取った上で、両方採用してくださったのが嬉しかったです。

飯塚 そういったわけで、ボックスは天野先生による両面描き下ろしのイラストという豪華仕様です。楽しみにしていてください。

 

 

 

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