蒼のカーテンコール
スペシャル座談会Ⅱ [総監督]佐藤順一
×
[監督]名取孝浩
×
[プロデューサー]飯塚寿雄
×
[原作担当編集]萩原達郎
スペシャル座談会Ⅱ [総監督]佐藤順一
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[監督]名取孝浩
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[プロデューサー]飯塚寿雄
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[原作担当編集]萩原達郎
【第1回】新作決定の舞台裏と新たに盛り込まれた要素
まず新作の企画が立ち上がった経緯からお聞きしたいのですが。
- 飯塚
- 2015年に『ARIA The AVVENIRE』が公開され、おかげさまで我々の想像をはるかに上回る数のお客様に劇場まで足を運んでいただくことができました。その結果として、ファンの方々から“願いの種”という名の新作を期待する声がたくさん届くようになりまして(笑)。ちょうどその頃、佐藤(順一)さんは同じ天野(こずえ)先生原作の『あまんちゅ!』のアニメ化をJ.C.STAFFさんと進めていたのですが、キャラクターデザインの伊東葉子さんが天野先生をすごくリスペクトされているなど相性のよさを感じたことから、このスタッフで新作をやれないかな、と考えはじめました。その後、佐藤さんや原作担当の萩原(達郎)さんにも正式に話をさせていただいたところ、萩原さんを通じて、『AVVENIRE』ではARIAカンパニーを中心に描いたので次はオレンジぷらねっとの話でどうでしょうか、と天野先生からのご提案があったんです。
- 萩原
- 『AVVENIRE』をやっていただいたときに、天野先生としてはアニメ化はこれで最後だと思っていたんです。ですから、新作の話をお伝えしたときはすごく驚かれていましたね。
天野先生が描かれた原作漫画の内容を知ったときの感想はどのようなものでしたか?
- 佐藤
- 上がってきたネームを拝見して思ったのは、「このときにこのキャラクターはそんなことを考えていたのか!」と(笑)。TVシリーズ第3期でアリスの昇格話(9話:『その オレンジの風につつまれて…』)をやったときは、アテナさんってドジっ子ではあるけど、アリスを導くという意味では頼れる先輩というイメージだったんです。でもアテナさんの視点から見た今回のお話だと、自分のせいでアリスを本来進むべきではない道に導いてしまったらどうしよう、とすごく不安を抱えていて。それは思ってもみなかったことでしたね。天野先生のネームを読んだ上であらためて考えてみると、たしかにアテナさんならそういうところをすごく気にしそうだし、自然なことだと思えるんですけど。
- 飯塚
- 僕も同じような感想を持ったのですが、同時に『AVVENIRE』からの連続性のようなものも感じました。TVシリーズでの先輩たちは頼れる存在として描かれることが多かったのですが、『AVVENIRE』と本作では、そんな先輩たちの変わることに対する戸惑いが描かれていますので。
- 萩原
- 『AVVENIRE』の原作となった漫画の「AQUARIA」は、最初のタイトル『AQUA』とその後に改題したタイトル『ARIA』を融合させた総決算の意味合いがあったんです。内容的にはアリシアさんから見た灯里とのエピソードの総括という形で、主人公側ではなく先輩側からの視点で物語が進む骨子になっています。その作りを応用できたことが、新作を描く上でのスタートラインになりました。
天野先生の原作漫画をベースにしつつ、アニメ独自の要素をどのように盛り込んでいったのですか?
- 佐藤
- 基本的には僕のほうでまずプロットを作り、その際に原作で人気のあったエピソードでまだアニメになっていないネタを入れるなどして中身を膨らませています。原作からのエピソードは魔女っ子ベファーナの話(原作10巻『エピファニア』)となりましたが、これはオレンジぷらねっとに関係する話ということでわりとすんなり決まりましたね。
- 飯塚
- こちらからも、ベファーナの話はぜひ、とオーダーしました。
- 佐藤
- その他に加えた要素としては、『AVVENIRE』のときにそれほど掘り下げられなかったアーニャの話もありますね。練習友達であるアイやあずさとのやり取りだけでなく彼女だけの物語が欲しくなって、幼なじみのアレッタというキャラクターを出すことにしたんです。
アレッタをシルフにした理由というのは?
- 佐藤
- 最初は、ウンディーネの仲間というイメージがぼんやりあったんです。でもあるとき急に、シルフを女の子にするといいかも、というひらめきがありまして。『あまんちゅ!』をやっていたときに天野先生から聞いたのですが、スキューバダイビングの話にする前はスカイダイビングで企画を考えていた時期もあったそうなんですよ。そんなことも思い出して、女の子が気持ちよく空を飛ぶのはありだな、と。それでシルフを目指す女の子にしたのですが、我ながらすごくいい思いつきでした(笑)。
- 名取
- 1時間の劇場作品であることを考えると、途中にエアバイクで空を飛ぶシーンが入るのはすごくバランスもいいですよね。『ARIA』の場合、どうしても水を映すショットが多くなるので。
その他、プロデュース側や原作側から要望したことはありますか?
- 飯塚
- アリスを可愛く描いてください、としつこく言っていた気がします(笑)。それと、アテナさんはドジっ子なところも魅力のひとつだと思うので、そういう部分も入れてほしいという話もしました。あとは、男性キャラを出すことでしょうか。今回、暁と灯里の絡みが2回あるんですけど、これは僕のほうから佐藤さんにお願いした記憶があります。二人のやり取りを見ると、なんだか安心するんですよね。
- 萩原
- これは『ARIA』のアニメ化における最大の成功要素だと思っているんですけど、天野先生も僕も佐藤監督に対して全幅の信頼を置いているんです。なので、これまで我々からお願いしたことって、TVシリーズ第1期の1話で削られる予定だったアリア社長のカットを戻してもらったことぐらいしかなくて(笑)。そういった中で今回は珍しく天野先生から、暁、アル、ウッディーの設定を現在に合わせた姿にしてください、というオーダーが入りました。自発的に新規のラフも上げてくださったので、それをもとに新しい設定を作っていただいています。
オレンジぷらねっとに焦点を当てる上で、新たに作った設定などはありますか?
- 萩原
- 原作にはない掘り下げがあるので、細かな設定を詰める必要はありました。アニメーションプロデューサーの松尾(洸甫)さんからの問い合わせで印象に残っているのが、アテナさんの髪の長さです。僕も松尾さんもてっきり地毛だと思っていたのですが、よくよく考えたら、人類史的にあそこまで急速に髪が伸びる人はいないわけで(笑)。天野先生に聞いたところ、「ウィッグです」とのことでした。
- 飯塚
- ウィッグの件は、名取さんもびっくりしてましたよね。
- 名取
- ウンディーネの仕事をしているアテナさんを描くシーンで、オペラのときと同じ髪型では大変なんじゃないかと思ったんです。髪をまとめるのかな? なんて想像しつつ質問させていただいたところ、地毛ではなくウィッグという返答があったんです。
- 佐藤
- その他だと、これまでオレンジぷらねっとの社屋は断片的な描写しかしていなかったんですけど、ついにその全体像がわかる設定を作りました(笑)。モデルにしたのは、ヴェネツィア本土ではなくムラーノ島に実在する建物です。