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special

蒼のカーテンコール
スペシャル座談会Ⅱ
[総監督]佐藤順一
×
[監督]名取孝浩
×
[プロデューサー]飯塚寿雄
×
[原作担当編集]萩原達郎
【第2回】アテナの新キャストとコロナ禍での収録
アテナさんの新キャストを迎えるにあたっては、どのようなやり取りがあったのでしょうか?。
飯塚
オレンジぷらねっとの話にすると決まった段階で、そこはもう既定路線ですから。あとは、佐藤(順一)さんにふさわしい方を決めていただくだけでした。結果的に候補として挙げていただいたのは、佐藤利奈さんだけでしたよね?
佐藤
そうですね。新キャストを決めるにあたって大事にしている条件がいくつかあって、まず1つ目が、『ARIA』という作品の世界が好きなんだろうな、と思える人。『ARIA』のキャストはだいたいそうなんですけど、ネオ・ヴェネツィアが大好きな人たちの集まりなんです。収録が終わったらすぐに「お疲れさまでした!」と帰ってしまうのではなく、一緒になってネオ・ヴェネツィアの素敵な世界に浸れる人であってほしいんですよ。そして2つ目が、今いるキャストの中に入ったときに、すぐにチームの一員として馴染んでいる光景が思い浮かぶような人。その上で、川上(とも子)さんに声質が近い人で、できればドジっ子がいいな、と(笑)。最初に挙げた2つの条件に合いそうな人は意外とたくさんいて、中でもサトリナさんが一番イメージに近い気がしたんです。唯一ドジっ子の部分だけ合致していないと思ったのですが、最近はそうでもないことがわかってきました(笑)。あと、サトリナさんにお願いしようと思ったもうひとつの理由として、今回は我々も知らなかったアテナさんの一面が描かれるという点がありました。アテナさんってドジっ子はドジっ子なんだけど、謳との向き合い方ではすごく芯がしっかりしていますよね。そういった部分が、サトリナさんとうまくシンクロをしてくれるんじゃないかと思いまして。
オファーに対する佐藤利奈さんの反応はどのようなものでしたか?
佐藤
サトリナさん自身が川上さんのことを大好きですし、受けるにあたっては相当プレッシャーがあったと思います。こちらからオファーをする際にも、もしキツいと思ったら断っていただいてもかまいません、とお伝えしましたし、実際に最初は「私でいいのでしょうか?」という反応が返ってきました。その後、正式にやっていただくことが決まってからは、川上さんが演じたアテナさんをすごく研究して、それを自分の中に取り込んだ上で新しいアテナさんを表現してくれまして。最初から、みんながびっくりするくらいアテナさんでしたね。
萩原
天野先生とアフレコに立ち会わせていただいたのですが、度肝を抜かれました。
飯塚
鳥肌が立ちましたよね。当日、僕は佐藤さんの後ろに座って収録を見ていたんですけど、サトリナさんのテストが終わったあと、こちらを向いた佐藤さんが満面の笑みで「いいでしょ」と言った姿が忘れられなくて。あんなドヤ顔を見たのは初めてですよ。
佐藤
実際、そんな気持ちでしたから(笑)。
飯塚
あの瞬間は、僕の記憶の中ではスーパースローモーションで焼き付いています(笑)。
佐藤
でも、すごかったのはサトリナさんなんですけどね。
萩原
もちろんそうなんですけど、この結果をイメージされていた佐藤監督の慧眼にやっぱりシビレました。
佐藤
正直に言うと、指名した自分自身も「そこまで似る?」という感じだったんです(笑)。想像では、もう少し違うものになると思っていたので。
飯塚
サトリナさんの演技の何がすごいかって、川上さんのモノマネじゃなく、ご自身と川上さんの演技をハイブリットしたアテナさんになっているところなんですよね。
佐藤
当初はサトリナさんもそこで悩んでいて。オファーのやり取りをしているときから、川上さんのアテナさんを演じればいいのか、それとも自分なりのアテナさんでいいのかで揺れていたんです。なので、モノマネではなくサトリナさんの考えるアテナさんを演じてください、とお伝えしました。それを受けて、アテナさんの役を受ける気持ちになってくれたようです。でも実際にやっていく中で、ファンの人はどう思うだろう? とか考えちゃうんですよね。そういう迷いはずっと抱えていたみたいです。
名取
プロってすごいと思いました。自分の声を操ってあそこまでアテナさんの声を再現できるのは、まさに技という感じがします。
佐藤
ただ、我々がいくら「すごい!」と言っても、一番気になるのはファンの声ですからね。ファンの方から同じ反応をもらえたときに、ようやくサトリナさんも安心できるのではないかと思います。
コロナ禍での収録はどのようなものでしたか?
佐藤
ブースに入ることができる人数が最大4人までと限られていたので、基本的に皆さんバラバラで録ることになりました。そのせいで、これまで通りの収録とはいかなかったですね。『ARIA』のアフレコ現場って、本来ならキャストがブースに入るとすでに音楽が流れていて、さらにおいしい紅茶まで出てくるというサロンみたい雰囲気なんです(笑)。今回はそういう現場作りができなかったので、皆さんも淋しそうにしてました。
萩原
天野先生もそのようなお話をしていました。以前であれば当たり前のようにできていたことなんですけど、今となってはかけがえのない時間だったと実感させられる部分はあったみたいです。
飯塚
現場で天野先生とキャストの皆さんが顔を合わせたときも、距離を保って挨拶するような感じでしたよね。そういう淋しさはありましたが、やり取りを見ていて思ったのは、SNSでは繋がっていても直接会うことの嬉しさってやはり違うんだな、と。接触できないとはいえ、お互いに顔を見て声を掛け合うだけでも喜びがすごく伝わってきましたので。
名取
僕としては、テストをほとんどやらなかったのがすごいと思いました(笑)。普通は通しで1回テストをやって、そのあとで本番じゃないですか。今回のアフレコでは、それぞれのキャラクターに割り当てられたセリフの1行だけテストをやって、あとは「思い出しましたね。じゃあ、本番行きましょう」みたいな流れだったので(笑)。
佐藤
マイクテストをちょっとやったあとは、本番でテープを回しながら録ってましたからね。
飯塚
それもあって、ほとんどの皆さんが予定より早く終わっていた印象があります。
佐藤
収録がバラバラでひとりずつじっくり時間を取りづらい事情もあったのですが、何より『ARIA』という作品では、キャストとキャラクターがイコールで結ばれているようなところがありますから。テストで芝居を確認するよりも、ポンと自然な状態で芝居に入ってもらうほうがよかったりするんです。実はTVシリーズの頃から、ドラマCDではそういうやり方をしていました。
飯塚
ただ全員で一緒に録ることはできませんでしたが、オレンジぷらねっとの3人に関しては、掛け合いの相手となるべく一緒にやれるようにスケジュールを調整してもらったんですよね。
佐藤
そうですね。やっぱり掛け合いでやれると、空気感も演じる方の意識も少し違いますので。3人だけでもやれてよかったと思います。